皆さんは、「バリア機能」という言葉を耳にしたことはありますか?
犬の皮膚は人間と同じように、外部からの刺激や有害物質から体を守ったり、皮膚の水分を保つ重要な役割を果たしています。
この保護機能の中心となるのが「バリア機能」です。
バリア機能は、犬の健康な皮膚と被毛を維持するために欠かせません。
しかし、不適切なケアや環境要因によって、このバリア機能が損なわれることがあります。
日常的に行うシャンプーも、バリア機能に大きな影響を与えている可能性があります。
今回は、犬の皮膚のバリア機能について解説し、バリア機能を守るためのシャンプーケアや日常生活でできるケア方法をご紹介します。
愛犬の健康な皮膚を守り、快適な生活を送るための知識を身につけましょう。
「バリア機能」って何?
バリア機能とは、文字通り皮膚が持つ「バリア(障壁)」機能のことを指します。
犬の皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっていますが、バリア機能は表皮の最も外側にある「角質層」で物質が行き来するのを調整し、健康な皮膚状態を保つ働きを持ちます。
具体的には、外部の刺激や病原菌などが皮膚内部に侵入することを防いだり、皮膚内部の水分が蒸発するのを防ぎ、保湿をする役割を果たしています。
健康な皮膚では、これらの機能が適切に働いているため、皮膚が刺激や乾燥から守られることでトラブルが起こりにくくなっています。
しかし、わんちゃんに合っていない皮膚ケアや環境要因によって、このバリア機能が損なわれてしまうことがあります。
角質層は主に角質細胞、皮脂、セラミドなどの細胞間脂質(細胞同士をくっつける脂質)で構成されていますが、皮脂や細胞間脂質が不足してしまうとバリア機能が低下してしまいます。
バリア機能が損なわれてしまうとどのようなことが起きてしまうのでしょうか?
バリア機能が損なわれると?
バリア機能が損なわれると、わんちゃんにいくつかの症状が現れることがあります。
下記の症状が見られる場合、バリア機能が損なわれている可能性があるため、注意が必要です。
- ・アレルギー反応
バリア機能は、アレルゲンの侵入を防ぐ役割も果たしています。
そのため、バリア機能が低下すると、様々なアレルゲン(花粉、ダニなど)が皮膚に侵入しやすくなり、アトピー性皮膚炎などの慢性的な皮膚疾患のリスクが高まります。
- ・皮膚感染症のリスク
バリア機能の低下により、病原体が皮膚に侵入しやすくなったり、皮膚常在菌のバランスが崩れやすくなります。
これにより、マラセチア性皮膚炎などの感染症を引き起こしやすくなります。
- ・炎症反応の増加
外部刺激に対する皮膚の防御機能が弱まるため、様々な要因で炎症反応が起こりやすくなります。
これにより、皮膚の赤み、腫れ、痛みなどの症状が現れやすくなります。
- ・乾燥肌
バリア機能が低下すると、皮膚の水分が蒸発しやすくなってしまい、乾燥肌になるリスクが高まります。
また、乾燥した皮膚はかゆみを引き起こすため、わんちゃんがかきむしったりすることで更なる皮膚トラブルにつながる可能性があります。
上記にみられるように、バリア機能の低下は様々な皮膚トラブルにつながってしまいます。
これらの症状が見られる場合、まずは獣医師に相談することが推奨されます。
バリア機能が低下する理由
バリア機能が損なわれる原因には、様々な要因があります。
主な原因としては下記が挙げられます。
- ・合わないシャンプーの使用
人間用のシャンプーや刺激性の高いシャンプーをわんちゃんに使っている場合など、犬の皮膚に合わないシャンプーの使用はバリア機能を損なう可能性があります。
- ・頻繁なシャンプー
シャンプーを頻繁に行うと、必要な皮脂も取り除いてしまうため、皮膚を乾燥させてしまいます。
適切なシャンプーの頻度はわんちゃんによって異なりますが、一般的には月に1回から2回の頻度で行うことが推奨されています。
- ・栄養不足
必要な栄養素が不足すると、セラミドなどの健康な皮膚を維持するために必要な成分が作られなくなるため、バリア機能が低下してしまいます。
- ・環境要因
普段湿度の低い環境で過ごしている場合、皮膚が乾燥することで、バリア機能が低下することがあります。
わんちゃんにとって健康で過ごしやすい湿度は40%~60%とされており、これを大きく下回ってしまうとバリア機能に影響が起こりうると考えられます。
これらの要因によってバリア機能が損なわれると、前述の皮膚トラブルが発生する可能性が高まります。
そのため、日常的にこれらのポイントを踏まえてケアを行うことがバリア機能を維持するうえで重要だと言えるでしょう。
シャンプーケア
バリア機能を守るための一歩としては、日常的にシャンプーケアを見直すことが大切だと言えます。
汚れやにおいを落としたり、皮膚病を予防するためのシャンプーですが、やり方次第でバリア機能を損なうこともあるため、適切な方法で行うことが重要です。
まず、シャンプーの頻度が重要です。
前述のとおり、頻繁にシャンプーをするとバリア機能を低下させてしまう恐れがあります。
外遊びで汚れた際などはシャンプーをする必要があるものの、基本的には獣医師に相談し、愛犬の状態合ったシャンプーの頻度でケアを行うことを推奨します。
また、適切なシャンプーを選ぶことが非常に重要です。
シャンプーは脂汚れを落とすことが主な目的ですが、洗浄力が高いものには刺激性が強いものが多く、皮膚トラブルを引き起こしてしまうこともあります。
一般的には洗浄力と刺激の強さは比例しているため、皮膚に優しいシャンプーは比較的洗浄力が低いとされていますが、皮膚トラブルが起きている場合はなるべく低刺激性のものを選ぶことが推奨されます。
CUaREのBioMedicalシリーズはシャンプーの主となる洗浄成分を低刺激のものにしつつ、洗浄力を特許成分のBioactive glassで補っているため、洗浄力と低刺激性を両立したシャンプーになっております。
全身を洗う必要がない場合、ドライシャンプーなどを用いて汚れた部分だけを洗うことも効果的です。
汚れが気になる部分をキレイにしつつも、皮脂を落としすぎてしまうリスクを避けることができるため、手軽に洗浄できるだけではなく、バリア機能を維持する面でも便利なアイテムです。
CUaREからはBioMedical DRYが販売されているため、ご興味がございましたらお求めください。
シャンプーの頻度や選び方に加えて、正しい洗い方を実践することもバリア機能を守るために重要です。
詳細は別記事で解説していますが、バリア機能を維持するうえで特に重要なのはシャンプー後に保湿をすることです。
シャンプーをすると、保湿する上で必要な皮脂も一部落とされてしまうことがあるため、シャンプー後は皮膚が乾燥しやすいと言われています(適度な頻度で行っていても乾燥することがあります)。
そのため、洗いあげた後は保湿をすることがとても重要です。
保湿効果のあるシャンプーや保湿剤を使用し、乾燥対策をすることで皮膚バリアを維持しやすくなります。
上記を心がけることで、バリア機能を守りながら、愛犬の清潔を保つことができます。
その他の日常ケア
シャンプー以外の日常ケアでも、皮膚のバリア機能を守ることができます。
- ・食事によるサポート
バリア機能を守るためには、栄養バランスの取れた食事も重要です。
例えば、オメガ-3脂肪酸やオメガ-6脂肪酸を含む食品は、皮膚を構成している成分で、摂取することでバリア機能を維持させる働きがあります。
また、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンEはバリア機能を構成する成分(セラミド等)を作り出すため、摂取することが推奨されます。
ドッグフードを購入する際は、これらの栄養素が含まれるかを確認してもよいかもしれません。
- ・環境管理
前述のとおり、乾燥した生活環境によってバリア機能が低下してしまうため、環境管理も欠かせません。
加湿器などを使用することで室内の湿度を適切に保ち、犬の皮膚の乾燥を防ぐことができます。
また、適度な掃除でアレルゲンが少ない環境を維持することで、皮膚への刺激を軽減することもできます。
- ・定期的な獣医師のチェック
定期的に獣医師のチェックもバリア機能の維持には欠かせません。
皮膚の状態はわんちゃんによって異なるため、獣医師に診察してもらうことで愛犬に合ったケアを実践することができます。
- ・ブラッシング
定期的にブラッシングを行うことで、余分な皮脂や被毛を取り除き、皮膚のターンオーバーを促進することができます。
これにより、新しい皮脂の分泌が促進され、皮膚のバリア機能を維持しやすくなります。
また、ブラッシングは皮膚や被毛の状態を確認する良い機会にもなり、皮膚トラブルを早期に発見するのに役立つでしょう。
適切なシャンプーケアに加えてこれらの日常ケアを組み合わせることで、犬の皮膚のバリア機能を維持しやすくなります。
まとめ
犬の皮膚のバリア機能は、外部からの刺激や有害物質から体を守ったり、皮膚の水分を保ったりする重要な役割を果たしています。
この機能が損なわれてしまうと、乾燥肌、アレルギー、皮膚疾患など、様々な皮膚トラブルにつながる可能性があります。
バリア機能を守るためには、適切なシャンプーケアが不可欠です。
使用しているシャンプーや頻度を見直したり、シャンプーをする際にしっかり洗い流して保湿をすることを徹底したりすることが重要です。
また、シャンプー以外の日常ケアも組み合わせることで、総合的にバリア機能をサポートすることができます。
日常ケアでバリア機能を維持し、愛犬と皮膚トラブルのない健やかな生活を送りましょう。